歌語連(ウタガタリ・ツラネ)(リアクション3)

歌語連(ウタガタリ・ツラネ)

p.3~3

ページ3

 手鏡を見つめて1分間。金剛 恵は今日もろっこん《トランス・イン・ミラー》で女性になり、街を歩いていた。
 うーん、この新しいブーツ、まだ履き慣れないなぁ。
 足元の違和感がどうにも治まらない。
 仕事用だし早く慣れないと、という思いから、恵の頭の中は次の仕事へと移行していた。
「わっ!?」
 仕事のことを考えるあまり、自然と周りへの注意はおろそかに。そして気がつけば、恵は盛大に転んでいた。しかもメイド服の少女を下敷きにして。
 なぜ街中にメイド服を着た少女がいたのか、それは恵にも分からない。彼女本人の趣味だとか、そういう些細な理由だろう。たぶん。
「ご、ごめんなさい。……あれ?」
 それより問題なのは、下敷きにしてしまった少女の外見だ。まるでアニメのような、キラキラした質感。どうもフツウの相手ではなさそうだった。
「いえ、大丈夫です」
 そう言って立ち上がったアニメ風のメイド少女は、恵の顔を見て、アニメ風の大きな目を見開いた。
「あっ! もしかして、桜乃さんですか?」
 恵は女性アイドル「桜乃春香」として活動している。その名を知っているということは、この少女、自分のファンなのかもしれない。
 そう思うとうれしくなって、それと同時になおさら申し訳なくもなって、恵はもう一度頭を下げる。
「本当にごめんなさい。ちょっとぼんやりしちゃってて」
「いえ、本当に平気ですから! 僕、こう見えても体力には自信あるんです」
 へえ、このビジュアルでボクっ娘なんだ。ちょっと意外。
 アニメ美少女な外見との違和感が、恵はふっと気にかかる。
「あの、サインとかしてもらってもいいですか? 僕、桜乃さんのファンなんです! 凄いなあっていつも思ってて」
 これまたメイド服には似合わない、男性向けのシンプルなデザインの手帳とペンを差し出され、恵はサインを書く。
「名前、入れます?」
「いいんですか!? じゃあ、僕、猫田 忍っていいます」
 サインに「猫田忍さんへ」と書き添えて、恵はアニメなメイド少女と別れた。
 外見変化、か。似たようなろっこん持ちっているものなんだな―。


イメージソング 『Dazzling World』


p.3~3

  • 最終更新:2018-02-22 22:19:20

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