合コンへ行こう!(リアクション4)


合コンへ行こう!

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 場が盛り上がって再びの自由時間。


 蓮太郎は少し休んでいた。
 さっきのツイスターゲームはとても激しかった。過度な運動は心臓に負担をかけるという事を蓮太郎はすぐ忘れてしまう。忘れてしまうというか、忘れていないと、はしゃげないというか。ふと胸によぎる痛みは、心臓の苦しさだけだろうか?ぽっかりと穴が開いてしまっている。ふいに孤独と云う名の風が吹けば、その虚空に気付かされる。
少し、はしゃぎ過ぎたかな……。いつもの変態の中年から、憂いを秘めた美青年の顔をして、蓮太郎は考えを巡らす。
 旅館の外に出て、涼やかな風に当たりながら少し気を静めよう……。
そっと立ち上がろうとして、目に入った説男の姿。ああ、そうだ。
……説男くん、時々ぼんやりしてる……。何かあるのかな。気になるから、後輩に付き添ってもらうって感じで連れていこうかな。

 ゆっくりと立ち上がり、マグロさんと話していた説男に声を掛ける。
 「説男君、楽しんでるかい?」
 蓮太郎を見るなり、顔を上げて何か考えた説男は、少し遅れて明るい声で返事した。 
 「うん!モチロン!なんか個性的なメンバーだよねえ!オレもちょっとビックリ」
 「そうかそうかー。俺のイケメンパワーに説男君もビックリか!え、違うって?」
 何か冗談めかした事を言ってみた。
 「うん、そうだね!」
 反射的な答えだった。いつもなら、そんな事ないよ~とか、冗談にノッて色々言いそうなのに……。
 やっぱり、変だ。蓮太郎は、一呼吸して、説男に声を掛けた。
 「説男君、ちょっと外で涼まない?いやー、オジサンはっちゃけちゃってさ、休みたいなーって思って……でも一人じゃ不安だし?」
 そう言った方が、連れだしやすいと思って。
 「え、センパイ、大丈夫!?いいよ、行こ行こ」
 ぴょんと立ち上がって、蓮太郎の横に並ぶ説男。愛想のいい後輩である。愛想がよすぎて、少し不安になる……。
 
 風が通る縁側に来た二人。日本庭園が落ち着きた雰囲気で、先ほどの喧騒から遠のいて、ゆったりとした気持ちになれる。
 「いや~疲れた……!かわいこちゃんに興奮し過ぎて、暴走機関車蓮太郎、脱線しちゃいました!」
 寝転がって、脚のを伸ばす。青い空が視界に入る。ふと目をやると、ぼんやり気味の後輩は、上がったり下がったりする鹿威しがお気に入りのようだった。何にも言わずに、見つめていた。
 「説男君も、ホラ!」
 ぺちぺち、床を叩いて誘ってみる。
 「あ、うん、そだね」
 はっと気づいて、蓮太郎に倣う。彼の視界には、青い空は映ってるのか?
 「なあ、説男君」
 「ん?」
 「たまにはこうやって、のんびりするのもいいんじゃないかな」
 「うん」
 「なあ、説男君」
 「んー?」
 「皆と楽しみたい気持ちも分かるけどね、時には一息つかなきゃ、その内心から楽しめなくなってしまうからね」
 庭園を吹き抜ける風に似た、穏やかな声。隣に寝転がる青年は、視線を上空に固定して古いレコードみたいに急に静かになる。針が止まった。無言の答えを聞いて、蓮太郎は、続けた。
 「元気で明るい説男君も大好きだけど、そうじゃない説男君も、俺は好きだよ。明るくなくなっても、誰もきみを見捨てたりしないよ」
 そんな言葉でよかったのか。彼の抱えてるものは、蓮太郎には、正しくは分からない。だけど黙って見過ごすわけにもいかない。出来る事なら目の前で歌ってハグして撫で繰り回したいぐらいだった。だが蓮太郎は我慢した。
 「だから説男君が休んでる時には、この世界一イケメンの蓮太郎センパイがハイテンションになるからっ!どーんと、休みなさい!!」
 起き上って、胸を叩いた。さっきどうしてここで休憩したくなったのか、蓮太郎は忘れていた。
 「……センパイ、いつもハイテンションじゃん……」
 困った笑顔。やっとちゃんと返事してくれた。
 「いつもじゃないぞーかわい子ちゃんがいる時だけだぁ~!!!」
 「ちょっっ……センパイ……????」
 やっぱり、ハグしてしまった。
 だって愛おしいんだもん。
 

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  • 最終更新:2015-09-26 15:40:41

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