合コンへ行こう!(リアクション3)


合コンへ行こう!

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 「さっきも説明したからルールは分かるよね。じゃあ、この割り箸を引いてくれ。もちろん、僕は最後に引くよ」
 紫鶴の指示で、円筒形の容器に入れられた割り箸の束が差し出される。
 籤を引く順番は、じゃんけん等で適当に決めた。

 「……あら、この赤い印って、王様ですの?」
 先ず最初の王様は……朱乃だった。
 会場のへ視線が、赤い割り箸を持つ手に集中する。まさか中学生の女の子が、そんな過激な命令をするわけはないだろう。ちょっとどきどきしながらも、朱乃の命令を待つ一同。
 「そうですわねえ……3番と5番でボッキーゲームして下さい♪」
 なにぃ!?全員が、自分の割り箸の数字を確認、そして、ばっと、周りを見渡す。
 3番――ねむる。5番――想一。目が、合った。
 「んん?ねむる君が3番で……想一さんは……5番っと……」
 ひょいひょいと手元を覗き込み、説男が確認する事で、周囲にもそれが伝わる。
 「ボッキーゲームなんて久しぶりねえ。なんだか恥かしいわね……」
 と、顔に手を当てながら想一は少し気がかりでもあった。相手は合コンはじめての男の子だし、自分はそういう趣味じゃないのだけど、誤解されていないか心配だ。
 「……ぼっきーげーむ……ってあの……」
 たじたじしているねむるに、マグロが説明する。
 「それはだなあ少年!二人で一つのボッキーを両端に咥えて、どんどんかじっていくゲームだっ!先に口を離した方が負け!まあチキンレースだな!」
 チキンレース……相手は男……ねむるは、男性とはもちろん、女性ともキスはしたことない。まさかこんな所ではじめてが奪われる……??
 「まあ、ただのお遊びだから、そんなに真面目に考えなくてもダイジョウブだから……」
 黙ったまま割り箸の棒を見つめるねむるを見て、想一は声を掛ける。少し心配になってきた、だいじょうぶかしら……。
 「男同士のボッキーゲームとか、しょっぱなから激しーな」
 「オレ、マグロさんがボッキーゲームするトコちょっと見たかったかもー?」
 「あーそれ俺も、特大ボッキーじゃねえと咥えられねーんじゃねーのか?」
 「それマグロさんちょー有利じゃん!」
 たまたま近くにいた、雷一と説男。雷一は話しながら自分の隣で、飄々と喋るばたばたと動く青年が少し気にかかった。理由は、なんとなくわかる。
 「ねむる君頑張ってーあたし応援してるからー」
 ねむるへの印象アップを怠らない万里。てかねむる君のファーストちっすはあたしが……あたしもファーストアレな訳だけど。もしもの場合は、転んだ振りとかしてうやむやにしちゃえばいーし。
 「それでは、お願いしますの。お二人とも、頑張ってくださいね」
 ふふふと微笑む朱乃の掛け声で、ねむると想一でポッキーゲームは始まった。
 「……あ、あの、ごめんね?優しくするから……」
 謎の断りを入れながら、ねむるは不安げに、ボッキーの端の方を歯と歯にあてがう。いつもはこの部分を手に持って、チョコのかかっている方から食べる。不思議な気分だ。
 「じゃあ失礼するわよ、ねむる君」
 そういって想一は少し申し訳なさそうに、反対のチョコの部分を唇に挟む。ぐっと、自分の唇に力が掛かるのを感じたねむる、ぎこちなくそれが真っ直ぐなるように唇だけでくいっと正す。
 心配そうな顔の想一が、困ったようにねむるを見つめる。誰が言ったか、スタートの合図。先に距離を詰めたのは想一だ。弾けるボッキーが、想一の唇の感覚をこちらに伝えて来る。僕も、かじらなくては……おずおずと先端をかじる。まだ、まだ想一さんは遠い。これでも十分近いが。ねむるがかじり始めたのを見て、想一は自分の端をゆっくりとかじる。想一は、ねむるの様子をみながらわざと緩やかなペースでボッキーゲームをしている。
 緊張……想一さんが近い。
 クリンチを出すと見せかけて肩をつけ、ボディーにショートパンチを連打されるような駆け引きを思わせる。異常な空間に眠気も吹っ飛ぶ。目線が気になる。
 ええーい、こうなったらやけだーー。頭がぐるぐるなりながらいっきにボッキーをかじりだすねむる。
 「おっとぉ、日暮選手、一気に追い上げるぅーー!?」
 突然の行動に雷一もテンション上がって実況中継。想一もびっくりである。やけになってないかしら……。万里さんは戦々恐々……本来ならあたしが想一さんの場所にいて、「えーやだーはずかしぃー」とかなんとか言ってる予定ェ……。
 そんな周囲の反応は目に入っていないねむるは、がりがりと一気に距離を詰める。さあ、想一の唇までもう眼前だ!マジかあいつと息を呑む一同。僅か数秒の時間。
 「あ、アタシ、ギブアップね!」
 とギリギリのところで想一がストップをかける。気がつくともう、ねむると想一は鼻先がくっついていた。
 「こんなゲーム、学生の時にやったきりで、久々で緊張しちゃったわ……」
 と明るく言いながら、想一は当初の予定通り自分から降りた。思ったよりもねむるがテンパっていたので驚いてタイミングを見誤るところだったが。
 「じゃ、じゃっポッキーゲームはねむる君の勝ち~」
 ねむるの手をとり、説男が終了の合図を告げる。つられて拍手がちらほらと。
 「お二人とも、とても素晴らしい奮闘でしたの。特に日暮さんは情熱的でしたわ」
 本当に心から感嘆して拍手する朱乃の姿に突然素に戻る。
 「……ゲームは好きな方だけど、こういうのは初めてで……」
 「まあ、日暮さんはゲームが大好きなのですわね!どんなゲームでも手を抜きませんの!素晴らしい勝負心ですわ」
 「ねむるっち結構積極的だな!もしかしてソッチ系じゃね?」
 頭をかきかき、照れるねむるに、雷一がからかいの一言を入れる。
 「やーねー、何言ってんの雷ちゃんー。ねむる君はこの場を盛り上げようと思って張り切ってただけなんだからねー」
 万里は真剣にそう思っていた。あたしの(そんなに遠くない)未来の美少年が、まさか男好きであるはずがない。
 「とりあえずあと何回かやるー?せっかく紫鶴クンが籤作ってくれたしー」
 場の一同もそれには賛成で、割り箸を改めて回収して、再度王様ゲームをする事に。

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  • 最終更新:2015-09-26 15:48:35

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