九夜山荘殺人事件(リアクション)

九夜山荘殺人事件


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 X年前、九夜山荘付近――。

「警部! 検視の結果出ました!」
 白い息を吐いて駆けてきた若い刑事の方を振り向くと、捜査の指揮を取っていた年老いた刑事は、分厚い手袋をした手で報告書を受け取った。
「どうれ……ふむ。死因は凍死、薬物等の反応はナシ、か。となるとやっぱり、事件性は薄いって考えた方がいいのかねぇ? 地元民への聞き込みの方はどうだい?」
「はっ、それが……」
 老刑事は片眉を上げて、口ごもった部下に続きを促す。報告書を警部にもたらした部下は、歯切れ悪そうにそれに応じた。
「それが……地元では専ら、『雪女の仕業だ』って噂でして」
「雪女だぁ?」
「どうやらこの辺りには、そういう伝説があるらしく……」
「伝説……ねぇ」
 老刑事は見上げる。ちらほらと白いものを降らす、どんよりと灰色に曇った空を。それから一つ老刑事は、白い、長い溜め息をついた。
「妖怪なんざの仕業でたまるかい。一番おっかないのは妖怪なんかじゃなくて……いつの世も、人間の心の闇なんだからよ」

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  • 最終更新:2015-02-26 19:05:27

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